複雑な歴史的背景を持つ台湾。オリンピックの際には「台湾」という名が使われていなかったり、日本との間でも正式な国交はないと言われていたりしますが、現在も特殊な事情を持つ国であることは多くの方がご存知のことでしょう。
今回は、そんな台湾という「国」の国際社会での立ち位置や、実際に台湾を国として認めている国などについて解説していきます。
台湾は国際社会で国として認められているのか
台湾は現在、実質的には独立した政府と経済体制を持ち、自国の領土内では完全な自治を行っていますが、多くの国際機関や国では正式な国家としての地位を認められていません。
これは主に、中国が台湾を自国の一部であると主張し、「一つの中国」政策を堅持していることに起因します。この政策により、多くの国が中国と国交を持つ代わりに、台湾との正式な国交を断念しており、国連をはじめとする主要な国際機関でも台湾は独立国としての席を持っていません。一方で、台湾は「中華民国」という正式名称を持ち、一部の国とは公式な外交関係を維持しています。
実務的な観点からは、台湾は世界中の国々と経済や文化、教育などの分野で活発に交流しています。多くの国が非公式な形で台湾と連携し、その独立性を事実上認める動きも見られます。ただし、正式な国家承認の欠如は、台湾の国際的な地位に制約を与えていると言えるでしょう。このような状況を踏まえ、台湾の国家としての認知に関する議論は今後も続く見込みです。
日本が台湾を国として承認していない理由
日本が台湾を国として正式に承認していない理由は、主に日中関係と国際的な外交バランスに関係しています。1972年、日本は中華人民共和国との国交を樹立する際、「一つの中国」政策を受け入れ、中国を唯一の合法政府として承認しました。この過程で日本は台湾との公式な外交関係を断ちましたが、実務的な交流は続けています。
この政策の背景には、経済的利益や地政学的要因が影響しています。中国は日本にとって最大級の貿易相手国であり、安定した関係を維持することが重要です。仮に日本が台湾を独立国として承認した場合、中国との関係が悪化する可能性が高く、それは日本の経済や安全保障に大きな影響を及ぼすと考えられています。
一方、日本と台湾の関係は非公式ながら非常に親密で、経済、観光、文化交流が盛んです。また、災害時の支援や相互協力を通じて、実質的には友好国としての関係を築いています。したがって、日本が台湾を国として承認していないのは、中国との関係を考慮した外交上の選択であり、それが直ちに台湾との実際の関係性を否定するものではないと言えるでしょう。
台湾を国として認めている国一覧
台湾を正式な国家として承認している国は、現在21世紀初頭の状況を考えると少数派です。その中には、主に中南米やカリブ海諸国、太平洋諸島の国々が含まれます。これらの国々は台湾と正式な外交関係を持ち、大使館や領事館を設置している場合もあります。
具体的な例として、パラグアイ、グアテマラ、ハイチ、ツバル、エスワティニなどが挙げられます。これらの国々は、台湾からの経済援助や技術支援を受けていることが多く、その見返りとして台湾を国として承認しています。一部の国は、台湾との外交関係を維持することで中国と差別化された関係を築くことを目指しています。
外務省HPによると、台湾と外交関係のある国は計12か国で、ツバル、マーシャル諸島共和国、パラオ共和国、バチカン、グアテマラ、パラグアイ、ハイチ、ベリーズ、セントビンセント、セントクリストファー・ネーヴィス、セントルシア、エスワティニと記載されています(2025年1月時点)。
ただし、これらの国々の数は徐々に減少傾向にあります。その背景には、中国が台湾との国交を持つ国々に圧力をかけ、経済的なインセンティブを提供して関係を中国側に切り替えさせる動きがあります。このため、台湾を国として認める国々のリストは固定的ではなく、国際情勢によって変化し続けています。台湾がこのような状況の中でどのように外交戦略を展開していくのかが、今後の注目点と言えるでしょう。