「外務省」という組織自体は存在しない台湾。そんな台湾でいう外務省の正式名称とは何なのか、そして外務大臣は誰なのか、そんな疑問にお答えしていきます。
台湾の外務省:外交部とは
台湾の外務省にあたる組織は「外交部」と呼ばれています。この機関は台湾の外交政策の運営を担い、海外との関係構築や各国との調整を通じて、台湾の国際的な地位向上と国益の保護に努めています。外交部は、一般的な外務省に相当する役割を果たし、国際的な場での台湾の発言力を高めることに尽力しています。
外交部の設立は1912年1月1日で、日本の外務省に相当する機関として、台湾の政府機関である「行政院」の傘下にあります。外交部は中華民国憲法第141条に基づいて設置されており、この条文には「中華民国の外交事務は独立自主の精神に基づき、平等互恵の原則に従って行わなければならない」と規定されています。このため、外交部は「平等な外交関係の維持」「国際組織との協力」「台湾人や海外在住台湾人の利益保護」といった外交方針に基づいて業務を行っています。
さらに、外交部は台湾の国益を守るため、各国の外交機関と協力し、国際的な場で台湾の立場や政策を説明する役割も果たしています。しかし、中国の「一つの中国」政策が国際社会において影響力を持つため、台湾の外交部は全ての国と公式の外交関係を持つわけではありません。現在、台湾と正式に外交関係を有する国は限られており、これに対して外交部は、公式な外交関係がない国々とも非公式な関係を築くことを通じて台湾の立場を強化する「総合外交」を推進しています。
外交部の内部機構は地域別・専門分野別に多岐にわたり、各国との外交や国際組織への参加、経済外交を含む多方面での関係強化を目指しています。また、「デジタル新南向政策」「栄邦計画」といった新たな政策を導入し、インド太平洋地域の国々とのデジタル連携や新たな経済関係を構築しています。これにより、台湾はより多くの国々と経済的・文化的なつながりを深め、グローバル社会での役割を高めています。
現在の台湾外務大臣は誰?
現在の台湾の外務大臣は林佳龍(りん・かりゅう)氏です。今年の5月より、呉釗燮(ご・しょうしょう)氏に代わって就任しました。
台湾の外交政策を総括し、外交部を率いて台湾の国際的な立場や関係を強化するためにさまざまな取り組みを行っています。台湾の外交方針として掲げる「総合外交」を推進し、デジタルや経済、同盟関係といった多様な分野における政策を通じて、台湾の国益の維持と向上を目指しています。
彼のリーダーシップのもと、台湾はアジア諸国との関係強化に力を注いでおり、「デジタル新南向政策」や「栄邦計画」などを通じて、インド太平洋地域での協力体制を築き、台湾の立場を一層強固にする方針を打ち出しています。
また、林氏は台湾の自由と民主主義を守る姿勢も示しており、中国との緊張関係に対しても冷静かつ確固とした対応を見せています。台湾の外交政策は、特にアメリカとの関係においても重要視されており、林氏は非公開でアメリカを訪問し、高官らと会談するなどの活動を通じて、台湾の安全保障面での協力関係を強化しています。