台湾といえば、日本と距離が近く、また物価もそれほど高くないことから、比較的手軽に留学ができる国として人気です。かくいう私もその一人で、大学の交換留学の枠を利用し、半年ほど台湾に留学をした経験があります。語学学校等には行かず、現地の大学でふつうに単位をとるような授業を受けていました。
そんな私の経験をもとに、台湾留学の「現実」や「後悔」などについて、リアルなお話をお伝えしていきます。留学をお考えの方は、一つの体験談ということで参考にしていただけたらと思います。
台湾留学の現実
日本語も英語も思ったより伝わらない
台湾といえば、「日本語がけっこう通じる」「簡単な英語も通じる」などというイメージをお持ちの方も多いでしょう。
しかし、私が半年暮らしてみた限りでは、「思ったより伝わらない」、というか、「全然通じないじゃん」というのが率直な感想でした。
まず日本語については、大学で日本語を学んでいるような学生でもない限り、ほとんど通じることはないと考えていいでしょう。一般的な学生や街中の飲食店の店員さん等、日本語が通じるといえば、日本の人気アーティストの名前や台湾に進出している日本食店の名前くらいです。
いわゆる日本統治時代に日本語を習得された方々はかなりご高齢ですから、これから留学に行こうという方は日常的に接する機会はなかなかないと思われます。
英語に関しても、それほど大きくは変わりません。日本語よりはわずかながらに伝わりやすい面がありますが、それも数や「5W1H」などの簡単な語くらいです。「さいあく英語が通じるから何とかなる」というのは完全な幻想だと思った方がいいでしょう。
ただし、台湾の大学生は、英語が堪能な方が多いです。台湾で良い企業に就職したり、あるいは海外資本のより給料の良い企業に就職するには、英語は日本以上に必須とされるようで、日本の学生とは比較にならないほど英語習熟度が平均的に高い印象です。
ですから、英語ができれば、他の学生たちとのコミュニケーションには困ることはないともいえます。
「食」に苦しむかも?
私個人としては、台湾の食事にはけっこう苦しめられました。
牛肉麺やコンビニ弁当など、台湾の食べ物の大半には「八角」などの独特な香辛料が含まれていて、食べられるものを探すのには苦労しました……。
コンビニにある冷やし中華を、スーパーで買った日本製の麺つゆにつけて食べてみる(付属のつゆが口に合わなかった…)など、色々と工夫しながら乗り切った感じです。
一から調理するという手もありましたが、料理習慣がなかった上、寮生活のためキッチンが共用だったこともあり、それは選択肢には挙がりませんでした。
ここ4、5年で、日本のお店が台湾にもかなり進出してきているので、私が留学していた頃(それよりもう少し前です)よりは外食環境が大きく改善してきているとは思います。
一方、先ほどの「日本語や英語が通じない」という話にも通じるのですが、近くの飲食店に行っても、意外に注文が難しいというハードルもありました。
私が台湾に行った当初は中国語なんて全くできない状態。紙に書いてオーダーするお店(このタイプのお店、けっこう多いんです)なら何とかなるのですが、口頭で注文しないといけない場合、たとえ指をさして示したとしても、店員さんから聞かれることが2、3個あって、適当に返事をしてもしっくりきていない反応をされることがけっこうありました。そうなると、その時は注文ができたとしても、だんだん行きたくなくなってくるんですよね。マクドナルドのようなチェーン店でも、セットなどの確認を求められるようなお店は注文難易度が高かった印象があります。
今は外国人にとって注文しやすい環境を整えているお店も増えているはずですから、過剰に恐れる必要はないと思いますが、私は帰国後に食べたラーメンが本当においしかった記憶があります(笑)。
ディスカッションの授業がきつい
語学留学の場合はそれほど気にする必要はないと思いますが、現地の大学の通常授業を受ける場合、ディスカッションやプレゼンの機会がそれなりにあります。これはその授業の言語(中国語か英語)が誰よりもできなかった私にとっては、かなり苦しかった……。
話を振られても、そもそも相手が何と言っているのかわからない。
自分が言いたかったことがうまく伝わらない。
こんなことがしょっちゅうあったわけですから、メンタルを削られることもしばしばでした。
台湾文化について英語で論じ合う授業では、「日本語でも何といえばいいかわからないのに」と思うような内容のディスカッションとプレゼンがあり、地獄でしたね……(笑)。
まあ、語学の勉強が不足していた自分が悪いとしか言いようがないのですが、心から「もっと勉強しておけばよかった」と感じたものです。
寮生活のストレス
台湾では完全な一人暮らしというのは一般的ではなく、寮に住む学生がほとんどです。
私の場合、世界各国からの交換留学生が済む国際寮のようなところだったので、台湾の住居の中では比較的住環境は良かった方なのですが、それでも2人部屋でした。
2人の空間を分けるものなんて一般的な部屋には一切ありませんから、そうなると、必然的にルームメイトの一挙手一投足がストレスになってくるわけです(笑)。どんなに良い人だとしても、寝る時間や起きる時間は多少なりとも違うでしょうし、こちらが集中したいときには相手の生活音が気になり、相手の食事や、シャンプーやトイレの使い方など、色々な面でのズレがストレスとして積み重なってくるわけです。
これが日本のように、最初から仲の良い人とのルームシェアであれば全く問題はないのでしょうけど、大学指定の寮の場合、知らない人とのルームシェアがいきなり始まることも決して珍しくはありません。そして中国語や英語など、互いにスムーズにやりとりができる言語がなければ、直してほしいことをうまく伝えることもできず、よりストレスがたまるというわけです。
もちろん、その分友情がアツくなる面もあるのですが、自宅でくらいは他人を気にせずリラックスしたいという場合は、住環境はよく考えた方がいいかもしれません。
台湾留学の後悔
こうして台湾留学を実際にしてみたことで見えた「現実」には苦しめられました。
しかし、「行かなければよかった」という後悔は一切ありません。
上記のような苦悩だけでなく、慣れない言語で、慣れない外国人たちに囲まれながら必死に勉強をする経験、旅行という形ではなく、海外に在住し、現地人に溶け込んで生活する経験などは、日本に住み続けていてはどう頑張っても経験ができないことでしょう。
正直、留学中は「楽しさ」よりも「苦しさ」の方がやや勝っていたかなと個人的には思うくらいですが、それでも「言って良かった」という気持ちは100%持っていますし、帰国して時間が経つと、どんどん記憶も美化されてきています(笑)。
実際、「苦しさ」が勝るというケースはむしろ少数で、多くの人が台湾留学を楽しんでいます。上記のような現実も、対策できるものは対策しつつ、うまく付き合いながら台湾生活を多くの方に満喫してほしいなと心から思っています。
ただし台湾留学の中で後悔があるとしたら、「もっと長くいて、語学に力を入れるべきだった」ということでしょうか。
半年というのは、本格的な留学の部類には入ると思いますが、中国語も英語も、いくら必死に勉強しても身につくものはたかが知れています。
また、1年というサイクルを一通り経験しているといないとでは、その国の理解度も大きく変わってくるでしょう。
そういう意味では、もし選べるのなら、1年くらいは行った方がいいのかなと、今では思っています。
留学をお考えの皆様の参考になれば幸いです。