いくら隣国である台湾とはいえ、日本の感覚そのままに旅行してしまうと、痛い目に遭うこともしばしば……。そこで本稿では、台湾旅行の際の注意点として、法的なことと文化的なことに分けて、最低限認識しておくべきことをお伝えしていきます。
法的な注意点
まずは最低限おさえておくべき、法的な注意点からお伝えしていきましょう。
MRTでの飲食は厳禁
台北市内を中心に整備されているMRT(地下鉄)は、日本の電車と比べて非常に清潔で、車内にゴミや食べこぼしがほとんど見られません。これは、駅構内や車内での飲食が厳しく禁止されているためです。日本では電車内でペットボトルの飲み物を飲んだり、軽い飲食をすることが珍しくありませんが、台湾ではこれがルール違反とされ、罰則の対象となります。
MRTの駅構内や車両内では、たとえ小さな飴やガムであっても飲食と見なされ、違反すると最大7,500元(約35,000円)の罰金が科される可能性があります。改札を通過した時点からルールが適用されるため、飲み物を手に持っているだけでも注意されることがあります。
まあ実際のところ、さすがに「飲食が人に見られた瞬間に罰則!」なんてことはないのですが、かなり厳しく運用されているのはたしかなので、誰かに注意をされるのは間違いありません。私はガムを噛んでいただけで現地の方に注意されたことがありました。

なお、台湾のすべての鉄道で飲食が禁止されているわけではありません。台湾にはMRTのほかに台鉄(台湾鉄道)や高鉄(新幹線)がありますが、これらの列車では飲食が許可されており、新幹線のみならず台鉄でも駅弁を車内で食べるのが一般的です。

公共の場はほとんど禁煙
台湾では、指定された喫煙エリア以外での喫煙は原則として禁止されています。特に、MRTの駅周辺やバス停、公園、歩道といった場所では、たとえ人が少なくても喫煙は厳禁。さらに飲食店やショッピングモールなどの屋内施設は完全禁煙が一般的で、日本のように分煙スペースが設けられているケースはほとんどありません。観光地でも禁煙エリアが広がっていて、例えば台北101や九份などでは指定された喫煙スペースでしかタバコを吸うことができません。
違反した場合、2,000元(約9,000円)から10,000元(約45,000円)の罰金が科せられることがあります。特に、歩きタバコやポイ捨ては厳しく取り締まられていて、現地の人から注意されることも少なくありません。
実際のところ、屋根のない完全な屋外であれば吸ってしまっても大丈夫なこともあるのですが、上記に当てはまらないか、周囲に喫煙禁止の標識がないか、旅行者としてはきちんと確認しておくことが無難です。心配ならきちんと認められているところで吸うのがやはり良いですね。
文化的な注意点
続いて、法的な罰則はなくとも、日本との文化の違いから思わぬ失態をおかしてしまうこともありえるので、そのあたりの注意点もお伝えしておきましょう。
優先席(博愛座)には座らない

台湾の公共交通機関では、「博愛座(バオアイズオ)」と呼ばれる優先席が設けられています。日本の優先席と同じように高齢者や妊婦、身体の不自由な方、小さな子どもを連れた人のために用意されたものですが、日本と比べて「本当に必要な人のために空けておく」という意識が強いのが特徴です。
日本では、電車やバスの優先席が空いていれば、一般の乗客が座ることも珍しくありませんよね。しかし台湾では、たとえ車内が空いていたとしても、一般の乗客が博愛座に座ることは避けるべきとされています。それを知らずに、日本の感覚のまま博愛座に座っていると、周囲から白い目で見られるか、場合によっては直接注意されることもあるため、トラブルを避けるためにも座らないようにしておいた方が無難です。
MRT(地下鉄)やバスの車内では、博愛座は一般席と異なる色で分けられているため、すぐに見分けることができますよ。
水道水は基本的に飲めない
台湾では、水道水をそのまま飲むことはおすすめされていません。日本では蛇口をひねれば安心・安全な水が出てきますが、台湾の水道水は飲用には適しておらず、地元の人々も基本的に直接飲むことはありません。
一応、台湾の水道水も消毒処理はされているのですが、配管の老朽化や水質管理の問題があり、安全性が保証されていないんですね。一度沸騰させれば飲めるとも言われていますが、わざわざせっかくの旅行中にリスクをとることもありませんから、ペットボトルの水を購入するのが安心ですね。台湾では、コンビニやスーパーがいたるところにあり、安価でミネラルウォーターを手に入れることができますよ。
また、ホテルやカフェの中にはウォーターサーバーが設置されているところもあります。これらの施設では、安全に飲める水を無料で提供している場合が多いため、積極的に活用すると良いでしょう。レストランでは、無料で提供される水が浄水されたものかどうかを確認し、不安がある場合はミネラルウォーターを注文するのが無難とされていますが、私の実体験では、お店で出されるお水で何か問題があった経験はありません。
とはいえ、私もシャワー中に水道水が口に入ったり、歯磨きには水道水をふつうに使ったりしていますが、その程度で問題になることはありませんから、過度に恐れる必要はないですよ!
トイレ基本的に紙を流せない

台湾のトイレでは、使用後のトイレットペーパーを便器に流さず、ゴミ箱に捨てるのが一般的です。
台湾の下水道は、日本のように強い水流で流す設計になっておらず、配管が細い建物も多く見られます。そのため、トイレットペーパーを流すと詰まりやすく、最悪の場合、水が逆流することもあるのですね。特に、古い建物や公共施設のトイレでは紙を流さないようにするのが基本です。そのようなトイレには「紙を流さないでください」と書かれた張り紙があり、便器の横には専用のゴミ箱が設置されています。
一方で、近年はトイレットペーパーを流せる場所も増えています。例えば、新しい商業施設やそこそこきれいなホテルでは、配管が改良されており、問題なく流せることが多いです。ただし、どこでも流せるわけではないため、流していいかどうかを確認してから利用するのが無難でしょう。
日本より暑い

最後に、「1年を通して日本よりちょっと暑い」という認識をもっておくとよいかもしれません。
台湾の夏
台湾の気候は亜熱帯から熱帯に分類され、年間を通して暖かいのが特徴です。特に6月から9月にかけては、30℃を超える日が続き、体感温度はさらに高くなることもあります。湿度も高いため、蒸し暑さが際立ち、日本の夏以上に体力を消耗しやすい環境といえます。さらに、突然のスコールや台風の影響で、一気に天候が変わることも珍しくありません。日本も最近はかなり暑い日がありますが、いずれにしても夏前後の旅行の際は、暑さ対策は必須です。
なお台湾の屋内施設は冷房がきちんときいていることが多いので、寒暖差の対策として、薄手のカーディガンやストールを持っておくと安心ですね。
台湾の秋・冬
そしてこれは秋や冬にも共通していえることで、たしかに真冬はかなり冷え込む日もあるのですが、基本的に日本よりも暖かい日が多いのです。
たとえば、秋前半の日中は、日本でいう初夏のような陽気が続きます。10月になると夏の暑さが徐々に和らぎ、日中の平均気温は25~28℃程度といったところ。湿度も夏ほど高くないため、外出や観光には適した季節といえそうです。台湾の秋は雨も少なく、青空が広がる日が多いので、屋外でのアクティビティや観光を楽しむには最適な時期といえます。
ただし、朝晩の気温は少し涼しくなり始めます。特に台北などの北部では、夜になると気温が20℃を下回ることもあるため、薄手の上着を用意しておくと安心です。一方、南部の高雄や台南では日中の気温が30℃近くまで上がる日もあり、まだまだ夏のような暑さを感じることもあります。
11月に入っても、日本に比べてやや暖かく、半袖でも過ごせる日があるほどです。私が11月に台南に行った際は、秋用の服で行っても、暑くて困ったこともありました。南部の方では、暖かい気候のまま年末を迎えるという年もあるくらいなので、「冬=厚着」という準備しかしていないと困ることがあるというお話です。もちろん、冬に行くなら防寒対策も欠かせませんが。
というわけで、いくら日本に近い台湾だとしても、日本での感覚のままに旅行をすると痛い目に遭うことがあります。法と文化の最低限の認識はもった上で旅行を楽しみたいですね!